ハーブやスパイスいえば外国のイメージがありますがそんなことはありません。
日本でもハーブやスパイスを食に取り入れてきた歴史があります。
そこで人の生活の楽しみのひとつであるお菓子に注目し、ハーブやスパイスが使われている日本のお菓子をまとめてみました。
ぜひご覧ください。
柏餅
柏餅とは、しんこ餅で餡を挟み、蒸した後で柏の葉で包んだ和菓子です。
柏の葉は殺菌作用、餅の乾燥を防ぐ、縁起担ぎ、香りを餅に移すことなどの目的で使われています。
しんこ餅に移った爽やかな香りを楽しむのみで葉は食さないのが一般的です。
柏餅の柏は神聖な木とされていて新芽が出ないと古い葉が落ちないことより「子供が生まれるまでは親が死なない」、つまり子孫繁栄、家系や跡継ぎが絶えないことの縁起物として端午の節句に食べることで有名です。
柏餅は味噌餡と小豆餡の両方が作られます。
葉の表を外側に包んでいるのが味噌餡で、裏なら小豆餡という風に区別してあります。
ちまき
ちまきとはもち米を笹の葉で包み蒸し上げた和菓子です。
屑を使用した水仙ちまき、それにこしあんを加えた羊羹ちまきなどがあります。
笹の葉は、防腐・抗菌・殺菌作用があります。
ちまきは本来は茅(ちがや)の葉で巻いており「茅巻き」と呼ばれるようになりました。
中国の故事において、茅は繁殖力が強く神霊が宿っており邪気を払う植物とされています。
また中国で、詩人の屈原を慕う人々が命日の5月5日に川にちまきを投げ入れて供養したことより、日本でも端午の節句で食される風習があります。
地方に広がっていく中で笹の葉などに包まれるようになりました。
八ツ橋
八ツ橋とは蒸した米粉に砂糖と肉桂粉をまぜた生地を堅焼きにした京都の名物です。
ニッキとは日本肉桂の根を乾燥させたものです。
ニッキは毛細血管を保護し血行を促進する、殺菌・解熱作用、整腸作用などの効果があり、香りや辛味が強いです。
ちなみにシナモンはセイロンニッケイの樹皮を乾燥させたものでは香りや辛味はマイルドです。ニッキは香りも辛味も強烈です。
八ッ橋が誕生したのは、元禄二年(1689年)です。
「六段の調べ」などで有名な箏(そう)の名手で作曲家でもある八橋検校(やつはしけんぎょう)から「八ツ橋」と名付けられました。
八橋検校没後、お墓参りに訪れる人のために琴に似せた焼き菓子を八ツ橋と名付け、茶屋で販売したことが始まりで、今尚人々に愛されている和菓子です。
ちなみに生八ツ橋は八ツ橋の生地を蒸し上げたお菓子です。
笹団子
笹団子とはヨモギ団子を笹の葉で包み蒸し上げた新潟名物の和菓子です。
ヨモギは繊維質やビタミンなどを豊富に含む万能薬です。
もち粉と上新粉を水分とこね、砂糖とヨモギを加え餡を包み笹の葉で包みイグサで縛り蒸し上げます。
上越地方では柏餅やちまき団子同様、縁起物として端午の節句に食す習慣があります。
桜餅
桜餅は春を楽しむ和菓子です。
2種類あり、長命寺(関東風)は小麦粉などの生地を焼いた皮で餡を巻いたお餅です。
これが桜餅の元祖であり、長命寺で門番をつとめていた山本新六が隅田川土手の桜の葉を毎日掃除していた際に何か活用できないかとお菓子にして振る舞ったのが初めと言われています。
道明寺(関西風)は道明寺粉で皮を作り餡を包んだお餅です。ちなみに道明寺粉はもち米を蒸して乾燥させ粗挽きにしたものです。
桜餅が関西に伝わる際に道明寺粉に変わったのではと言われています。
桜の葉の塩漬けで包まれており、大島桜という柔らかい葉が主に使われています。
桜の葉を塩漬けにすることで、抗菌作用のあるクマリンという成分が生成され保存状態もよくなり、さらに独特の風味が生まれます。
塩漬けの葉だからこそ桜餅に桜の香りや塩気がつき、美味しさが増すのです。
人の生活の知恵と共に各国で愛されるハーブやスパイスたち
どのお菓子も祖先の知恵や風習と共に受け継がれてきた伝統があることがよく分かります。
ハーブやスパイスは人の生活には切っても切れない存在であり、お菓子としても私たち人間の暮らしに寄り添い支えてくれたありがたい存在なのです。
この伝統を守り、受け継ぎ、食していくことは、とても大切です。
日本ならではの和菓子たちをこれからも楽しんでいきましょう。